ボトム全面に凹んだ溝を掘っているデザインがコンケーブです。
オーストラリアのシェイパー グレッグ・ウェーバーが開発してから、今やサーフボードのボトムデザインとして主流となっているメカニズムです。
おおまかな種類としては、ボトムにひとつの溝を全体に掘ったシングルコンケーブ、ノーズからセンター辺りにかけてシングルで掘り込みテールエンドにかけてストリンガーを中心にふたつに分かれていくシングルダブルコンケーブといったものがあり、このシングルダブルをシングルで掘った中に折り込むなどといったように様々なデザインが様々なシェイパーによって開発されて来ています。
このコンケーブが誕生するまでのボトムデザインとしては基本的にはフラットボトム、またターン性能をよくするためにボードを傾けやすくするためのVEEボトムといったデザインが使用されていました。
フラットボトムをもっと傾けやすくコントロールしやすくするために、ストリンガーを中心にV状に左右のレールに向けて傾斜をつけるVEEボトムが使用され、安定感は損なわれつつも反応良いコントロール性を当時は実現出来ると画期的なデザインでもあったのでしょう。
今ではレトロなツインなどで、レトロさを重視する中で採用されていることも多くみかけるデザインです。
ではコンケーブを入れることでどのようなメリットがあり、またどのようなデメリットがあるかを話してみたいと思います。
サーフボードでパドルやライディングをする際に、ライダーの荷重を支えるのが浮力です。コンケーブが誕生する前は、このボード自体の浮力によってパフォーマンスを支えていたと言えます。
ただその分ボードの厚さは厚いものとなり、パフォーマンス性やスピード性能に限界を感じる部分もありました。
今や主流となっているコンケーブデザインは、この厚さを薄くしてスピード性能とパフォーマンス性能を高めるデザインとして生まれ多くのシェイパーに注目されていきました。
従来のフラットボトムなどのデザインは浮力のみに頼る部分がありましたが、ボトムにコンケーブを掘り込み水の流れの道を作り流すことによって、ボードにはボードの浮力の他に水の流れから生まれる揚力も得られるようになります。
浮力の他に、ボードにスピードが得られるほどに揚力も高まるので、このふたつの支える力によって荷重が支えられることになるのでボードの厚さを抑えられるメリットが得られます。
もう少し詳しく話してみれば、浮力はボードが止まっていても走っていても変わらないのですが、揚力はボードが止まっているときは生じていないがボードにスピードが得られるほど増大していきます。
サーフボードはパドリングやテイクオフ時など、比較的スピードがついていないときには浮力の効果によって支えられています。
しかしボードが走りスピードを得られるほど揚力が生まれ、ボードスピードが速くなっていくほどサーファーは殆どの重量や荷重を揚力だけに支えられるようになって来ます。
パドリングにおいても、コンケーブが上手く機能して揚力が得られるようになると、漕ぐほどに加速を感じてパドルが楽に感じるといったことも可能になって来ます。
何故スピード性能が増すかというのは、コンケーブを入れることでボトムに一本の水を流す道が出来るので、生まれる揚力からも直進推進性能を高めスピード性能も飛躍的に高めることが出来るのです。
ボードの厚さが抑えられることによって、よりサーフボードを取り回ししやすくすることもでき、パフォーマンス性能も飛躍的に軽くすることが出来るようになるということですね。
今でもパドル性能やテイクオフ性能を浮力だけに頼りオーバーフロートのボードを手にしてしまい、乗ってからのコントロール性などに悩んでおられる方をよく見かけることもありますが、コンケーブが入っているボードでは浮力と揚力のバランスを考える中で自分のレベルやスタイルに合ったボリュームのボードを手にされることがおすすめになると思います。
またコンケーブはスピードも得やすくなるといったメリットも得られることから、ボードの長さも比較的抑えることが出来るデザインとも言えるかと思います。
この浮力と揚力によるスピード性とコントロール性が高まるということが、コンケーブデザインのまずひとつのメリットと言えますが、このコンケーブは荷重による水面に吸い付くようなタイトな感覚を得られるのも、もうひとつのメリットだと言えるかと思います。
特に風の影響のない面のクリーンな規則正しく綺麗にブレイクするような波では、より波に同化するようなタイトで安定感も高いライディング感覚が得られるようになるかと思います。
この波にタイトな感覚を得られるのがもうひとつのコンケーブデザインのメリットと言えますが、ひとつの溝で掘り込むシングルコンケーブというデザインがあります。
ひとつの溝でひとつの水の流れの中では、コンケーブが深いほどに吸い付くような感じが強まり、クリーンでパワーもあるフェイスでのライディングではスピード性能も優れおすすめになるデザインですが、テールコントロールのスキルのないサーファーや変化の激しいビーチブレイクで細かいコントロールが必要となる場合などにコントロール性能が重く感じるようになることもあります。
この辺ロッカーとのバランスにもよりますが、フラットボトムでコントロール性を高めるためにVEEを施した考えと同様なのがシングルコンケーブにテールエリアにふたつの溝をプラスさせて掘り込んだシングルダブルコンケーブデザインと言えます。
テールエンドにかけてVEEを施す代わりにダブルのコンケーブを掘り込み、テールにかけて水の流れをふたつに分けることによって、コントロールのきっかけを作りやすくしたデザインになります。
VEEボトムによる左右のフラフラした感覚がコンケーブデザインではなくなるので、安定感も高まるメリットもあると言えます。
左右のレールが波に食い付くような感じにもなるので、パドルやテイクオフ、またボードを直進させる際にも高い安定感を得られるようになるのも可能になって来ます。
以上がコンケーブデザインによるおおまかなメリットと言えますが、デメリットはどんなところかも話してみたいと思います。
コンケーブを深く掘るほどの特性として波面に吸い付く感が強まるといったところがあるのですが、この特性は波面がクリーンで波にパワーがあり、規則正しく綺麗にブレイクする波ほど有効になってくると言えます。
オンショアなどのチョッピーな波のパワーやブレイクの不規則な波では、この吸い付くようなタイトな感覚が強まるほど、波に引っかかるようなといったようにコントロールのしづらさを感じてしまうものです。
またこういったコンディションでは加速するにも水の流れが不規則になり、上手くボードを走らせることも困難になってくるといったこともあります。
チョッピーコンデションやパワーレスな波では、ボリュームやロッカーの調整は勿論、比較的コンケーブの深さの度合いも考慮され施されたボードが有効になってくると言えます。
このようにコンケーブのメリットは素晴らしいものではありますが、日本のように波が不規則なブレイクが多いコンデションでは、メリットを持たせつつデメリットを解消するにも波のコンデションによってボードを使い分けるといったこともおすすめ出来ることが理解出来るかと思います。
特に海外の波に合わせたシェイプのボードは、比較的コンケーブも深くハッキリ施されたものを多くみかけます。こういったボードでは日本に波質では不安定感などに繋がる場合があり注意が必要です。
日本の波質でもサイズとパワーのしっかりある、規則正しく綺麗にブレイクするようなグッドウェーブコンディションで、フルボトムでビタッと前足でコントロールしながらフルスピードでライドするような波の時に使用するボードは比較的前足よりから深めにコンケーブを掘り込むのが良いようです。
ただ日本ではこのような波は中々出会うことがなく、台風スウェルによるクラシカルなリーフポイントや河口のパーフェクトブレイクだけといった感じになるかと思い、あまり日本では有効なデザインとは言えないかと思えます。
殆どの日本人のサーファーが、パワーもブレイクも不規則なビーチブレイクがメインとなるかと思いますので、その辺をしっかり考慮してデザインされているコンケーブを施されたボードの方が確実に乗りやすく感じられ、より楽しめることも間違いないかと思います。
見た目同じようにコンケーブを施されてはいても、そこはシェイパーの腕の見せ所とも言えるかと思います。
スムースに水の流れを生み出すことの出来ない水の流れを妨げてしまうようなシェイプのボードでは、どんなにコンケーブが入っていても逆に抵抗を生んでしまう走らないボードになってしまいます。
実際私もそういったボードをヨシノシェイプの他のボードで体感しています。見た目良さそうであっても、実際乗ってみると変な引っ掛かりを感じてしまい、思うようにボードを走らせることが出来ずコントロールもしづらいといったように。
やはり信頼の出来るシェイプスキルの優れたシェイパーにボードを作ってもらうことが重要かと思います。
いかにノーズから素早く水を流し込め、テールエンドにかけて抵抗無くスムースに水の流れを生み出せる美しい丁寧なシェイプが出来るシェイパーほど、間違いなく更なる良いボードを手渡してくれるかと思いますので。
あえて吉野がどういったデザインのコンケーブを施しているかということを、シークレットな部分でもありますので詳細には紹介はいたしませんが、たとえ薄めなボードでも吉野の生み出すボードの評判を得ているスピード性能とコントロール性の高さ、そして安定性の高さは、このコンケーブデザインにおいても絶対自信を持ってお勧め出来るところでもあります。
いかなるコンデションでも対応出来るロッカーとコンケーブデザインを施せる、多くの技術を持ち合わせていますので。 このロッカーとのバランスも、サーフボードの性能を決めるところとしてとても重要な部分でもあります。